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パステル・デ・ナタ日本では「ポルトガルのエッグタルト」ともPastel de nata レシピ

Pastel de nataパシュテル・ドゥ・ナタ

地域
スペイン・ポルトガル(リスボン(ベレン))
分量
エッグタルト型(上径7cm・深さ2.5cm)12個
難しさ
むずかしい
公開
大理石のテーブルの白い皿に並ぶパステル・デ・ナタ。表面に黒い焦げ目、縁は層になったパイ生地。ひとつはかじってあり、ふたつはアルミの型のまま。奥にエスプレッソ

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パステル・デ・ナタは、パリッと割れる渦巻きのパイ生地に、卵黄のクリームを詰めて焼いたポルトガルの小さなタルトです。表面にはところどころ黒い焦げ目がつき、クリームはとろりと柔らかく、シナモンとレモンの香りがします。

リスボンのある専門店の工房では、家庭のオーブンよりはるかに高い400℃で、約15分焼くと紹介されています。家庭では、オーブンを最高温度にし、天板ごと予熱して上段で焼くことで近づけます。

パステル・デ・ナタとは

ポルトガル語のつづりは Pastel de nata で、複数形は pastéis de nata(パシュテイシュ・ドゥ・ナタ)です。パステルは小さな焼き菓子やパイ、ナタはクリーム(乳脂肪)を指します。ただし、リスボンのナタ専門店マンテイガリアのダニエル・シルヴァは、ポルトガルの新聞オブセルヴァドールの取材に、ポルトガルのパステル・デ・ナタには生クリームを入れない、と話しています。中身は、牛乳と卵黄と砂糖を小麦粉やでんぷんでとろみづけしたクリームです。

ベレンの修道院のそばで

パステル・デ・ナタと切り離せないのが、リスボンの西のベレン地区にある菓子店「パステイス・デ・ベレン」です。店の公式サイトは、由来を次のように説明しています。

19世紀のはじめ、ジェロニモス修道院の隣にはサトウキビの製糖所があり、小さな商店が付いていました。1820年の自由主義革命のあと、1834年に国内の修道院が閉鎖され、聖職者や働き手は追い出されます。生きていくために、修道院の誰かがこの店で菓子を売り始め、それが「パステイス・デ・ベレン」と呼ばれるようになったとされています。1837年には製糖所に隣り合う建物で、修道院のレシピによる製造が始まったと伝えられています。

この修道院起源の話は、店自身の説明です。リスボン観光協会のサイトも同じ内容を紹介しています。修道院でどのような配合で作られていたかを示す当時の記録は、この記事で参照した情報源の中には示されていません。店はレシピを秘密にしていて、「秘密の工房」(Oficina do Segredo)で菓子職人だけが作っていると説明しています。

ポルトガル語版ウィキペディアによると、「パステイス・デ・ベレン」という名前とレシピは店が権利を持っていて、この店で作るものだけの呼び名です。ほかの店や家庭で作るものは「パステル・デ・ナタ」と呼ばれます。

家庭で作るときの生地

この記事で参照したポルトガルの料理雑誌テレクリナーリアの3件と、ネスレ・ポルトガルのレシピは、どれも市販のパイ生地(マッサ・フォリャーダ)を使っています。そのうち3件は、生地をきつく巻いて輪切りにし(テレクリナーリアには、巻く前に水を塗るレシピもあります)、指(親指)で型に押し広げます。指や型を水でぬらしておくレシピもあります。こうすると、渦巻きの層が型の側面に沿って立ち上がります。

生地を手作りする方法は、ポルトガルの放送局SICの料理番組でシェフのヴァスコ・アルヴェスが紹介した作り方(ラジオ局RFMの記事による)にならい、三つ折りを3回にしました。ヴァスコ・アルヴェスの作り方では、生地にマーガリンとラードも使いますが、この記事ではバターだけにしています。マンテイガリアの工房を訪ねた記事でも、バターを包んだ生地を2〜3回折っています。

ただし、手作り生地の分量(中力粉160g・水85ml・バター120g)は、この記事で決めたものです。ポルトガルの情報源では、手作りの生地の分量を示したものを見つけられませんでした。そこで、フランス式のパイ生地の一般的な比(水は粉の50%前後、折り込むバターは粉の70〜80%)に合わせています。市販の冷凍パイシートで作る方法は、後半の「手に入りにくい材料の代用」で紹介します。

パステル・デ・ナタのレシピ:材料(エッグタルト型(上径7cm・深さ2.5cm)12個)

生地づくり 3時間45分(生地を冷やす時間を含む)焼き 12〜18分難しさ むずかしい

生地(マッサ・フォリャーダ)

  • 中力粉(ポルトガルの T55 の代わり)160g
  • 塩3g(小さじ1/2)
  • 冷水85ml
  • 食塩不使用バター(溶かす)10g
  • 食塩不使用バター(折り込み用。冷やしておく)(Amazon|楽天)110g

型の準備と成形

  • 強力粉(打ち粉)30g
  • 水(生地に塗る)15ml(大さじ1)
  • 水(指をぬらす)15ml(大さじ1)
  • 食塩不使用バター(型に塗る)10g

シロップ

  • グラニュー糖150g
  • 水70ml
  • シナモンスティック1本(長さ約8cm・3g)
  • レモンの皮(国産・ノーワックスのもの。白いわたを除く)3g(幅2cm×長さ6cm 1片)

クリーム

  • 牛乳(成分無調整)200ml
  • 薄力粉15g
  • コーンスターチ5g(小さじ1と2/3)
  • 卵黄54g(Mサイズ3個分)

仕上げ

  • シナモンパウダー1g(小さじ1/2)
  • 粉砂糖5g(小さじ2)

道具

  • エッグタルト型(上径7cm・底径4.5cm・深さ2.5cm前後(容量約65ml)のアルミ製を12個。深さ2cmの型やマフィン型でも作れる)(楽天)
  • 料理用温度計(200℃まで測れるもの)(Amazon|楽天)
  • オーブン温度計(Amazon|楽天)
  • デジタルスケール(0.1g単位)(Amazon|楽天)
  • 麺棒
  • はけ
  • 泡立て器
  • 目の細かいざる
  • バット(型を並べて冷蔵庫に入れる)
  • 天板(予熱しておく1枚)
  • 網

作り方

  1. 生地をまとめる

    ボウルに中力粉160gと塩3gを入れ、溶かしたバター10gと冷水85mlを加えてゴムべらで混ぜ、手でひとまとめにする。表面がなめらかになれば十分で、こねすぎない。平らな四角に整えてラップで包み、冷蔵庫で30分休ませる。

  2. 折り込みバターを整える

    折り込み用のバター110gをラップではさみ、麺棒でたたいてから12cm角にのばす。冷蔵庫で10〜15分冷やし、曲げても割れない固さにする。

  3. バターを包む

    台と生地に打ち粉(強力粉30gから使う)をふり、生地を20cm角にのばす。中央にバターを45度ずらして(バターの角が生地の辺の中央を向くように)置き、生地の四隅を中心に向けて折って包む。合わせ目はつまんで閉じる。

  4. 三つ折りを3回する

    生地を縦長に36×12cmほどにのばし、三つ折りにする。ラップで包み、冷蔵庫で30分休ませる。次は折り目が左右に来る向きに置いて同じようにのばし、三つ折りにして休ませる。これを合計3回くり返す。途中でバターが柔らかくなってにじんできたら、すぐに冷蔵庫で冷やす。

  5. 生地を巻く

    生地を24×40cm(厚さ3mm前後)にのばし、余分な打ち粉をはけで払う。表面に水15mlを薄く塗り、24cmの辺から、すき間ができないようにきつく巻いて直径4〜5cmの棒にする。ラップで包み、冷蔵庫で30分以上、固くなるまで冷やす。

  6. 型に敷く

    型の内側にバター10gを薄く塗る。生地の棒を2cm幅に切って12個にする。切り口を上下にして型の底に置き、親指を水15mlでぬらしながら、中心から外へ押し広げる。底は薄く、側面に沿って生地を上げ、縁より1〜2mm高くする。バットに並べ、冷蔵庫で15分以上冷やす。

  7. オーブンを予熱する

    天板1枚を上段に入れ、オーブンを最高温度(250℃。300℃まで上がる機種はその温度)で20〜30分予熱する。

  8. シロップを煮る

    小鍋にグラニュー糖150g、水70ml、シナモンスティック、レモンの皮を入れて中火にかける。砂糖が溶けて沸騰したら、温度計で105〜107℃になるまで煮る(温度計がなければ沸騰してから2〜3分)。火を止める。熱いシロップは肌につくと深いやけどになるので、顔を近づけず、子どもを台所から離しておく。

  9. 牛乳にとろみをつける

    牛乳200mlのうち50mlで、薄力粉15gとコーンスターチ5gをだまがないように溶く。残りの牛乳150mlを鍋で沸騰直前まで温め、溶いた粉を加える。泡立て器で混ぜ続けながら中火で1〜2分、もったりとするまで煮る。

  10. シロップを合わせる

    シロップからシナモンスティックとレモンの皮を取り出し、とろみをつけた牛乳に細くたらしながら混ぜる。ボウルに移し、ときどき混ぜながら40〜50℃(指で触れて温かい程度)まで冷ます。

  11. 卵黄を加えてこす

    卵黄54gをほぐし、冷ましたクリームに3回に分けて加え、そのつど混ぜる。目の細かいざるでこし、計量カップなど注ぎやすい器に入れる。

  12. 詰めて焼く

    型にクリームを7〜8分目(1個約38g)まで注ぐ。予熱した天板は250℃前後になっているので、厚手のミトンをして取り出し、型を並べて、すぐに上段で12〜18分焼く。クリームがふくらみ、表面のところどころに黒っぽい焦げ目が出て、縁の生地が濃いきつね色になったら焼き上がり。1個を型から外し、底もきつね色か確かめる。焼き上がりの天板と型もとても熱いので、ミトンで扱う。

  13. 冷まして仕上げる

    型のまま5〜10分おいてから外し、網にのせる。中のクリームは熱がこもっているので、やけどしないよう、手で持てる温度になってから食べる。食べる直前に、シナモンパウダー1gと粉砂糖5gを茶こしでふる。

焼き上がりから粗熱がとれて、まだ温かいうちが食べごろです。シナモンと粉砂糖をふり、濃いエスプレッソと一緒にどうぞ。

料理科学:オーブンを最高温度にする理由

生地の層は蒸気で持ち上がる

パイ生地は、薄い小麦粉の生地とバターの層が何層も重なったものです。焼くと、生地とバターに含まれる水分(バターの約15〜18%は水です)が蒸気になり、その力で層と層のあいだが押し広げられます。料理科学者のハロルド・マギーは、パイ生地を熱いオーブンで焼くのは、バターが溶けて流れ出る前に蒸気を一気に出して、層を持ち上げたまま固めるためだと説明しています。

温度が低いと、蒸気が出る前にバターが溶けて生地にしみ込み、層がつぶれて重い生地になります。三つ折りのたびに冷蔵庫で休ませるのも、バターを固いまま層に保ち、小麦粉のグルテン(水を加えてこねるとできる、弾力のあるたんぱく質の網)をゆるめて縮みを防ぐためです。

ポルトガルの情報源では、家庭向けで240〜300℃、マンテイガリアの工房では400℃で約15分と紹介されています。家庭のオーブンは上限が250℃前後なので、天板ごと予熱して型の底から熱を伝え、上のヒーターに近い上段で焼いて補います。ポルトガル出身のシェフ、ヌーノ・メンデスのレシピも、最高温度に予熱した天板の上で焼く方法です。300℃に設定できるオーブンでも、数分で250℃前後に下がる機種があるので、オーブン温度計で実際の温度を確かめておくと安心です。

小麦粉入りのクリームは高温でも分離しにくい

でんぷんを入れずに卵だけで固めるカスタードは、おおむね80〜90℃を超えると卵のたんぱく質が固まりすぎて、ぼそぼそに分離します。プリンを湯せんで低温で焼くのはそのためです。

パステル・デ・ナタのクリームには、小麦粉やでんぷんが入っています。マギーによると、加熱して糊化した(水を吸ってふくらみ、とろみがついた)でんぷんは、卵のたんぱく質どうしが固く結びつくのをじゃまするので、沸騰させても分離しにくくなります。カスタードクリームを煮立てても、なめらかなままなのと同じ仕組みです。そのため、オーブンの最高温度で焼いても、中はとろりとしたまま表面に焦げ目をつけやすくなります。焼く時間が短いのは、生地が焦げる前に、クリームが固まりすぎる前に取り出すためでもあります。

料理科学:シロップと焦げ目

砂糖をシロップにしてから加える理由

この記事で読んだポルトガル語のレシピ5件のうち3件は、砂糖を水と煮てシロップにしてから、牛乳のクリームに加えます。この配合では、牛乳200mlに対して砂糖が150gと多めです。先に水で煮て溶かしておけば、とろみのついたクリームにも砂糖が均一に混ざります。105〜107℃まで煮詰めるのは、水分を少し飛ばして濃いシロップにし、クリームに入る水分を増やしすぎないためです。シロップにシナモンとレモンの皮を入れて煮ると、香りもいっしょに移せます。

砂糖が多いことには、もう一つ意味があります。マギーによると、砂糖は卵のたんぱく質が固まる温度を上げます。砂糖の多いクリームは固まり始めるのが遅く、高温の短い焼き時間のあいだ、柔らかさを保ちやすくなります。

黒い焦げ目はカラメル化とメイラード反応

焼いているあいだ、クリームの中は水分があるので、100℃前後より上にはほとんど上がりません。一方、熱いヒーターに近い表面は乾いて、100℃をはるかに超えます。

表面がおおむね120〜150℃を超えると、卵と牛乳のたんぱく質(アミノ酸)と糖が反応するメイラード反応が勢いよく進み、香ばしい焼き色がつきます。さらに160℃を超えたところでは、砂糖そのものが分解して色づくカラメル化が起こります。ふくらんで盛り上がった部分ほど上のヒーターに近く、乾くのも早いので、焦げ目はまだらにつきやすくなります。焦げ目ができる前に生地が焼けすぎてしまうときは、オーブンの温度が足りていません。

地域による違い

ポルトガル語版ウィキペディアによると、パステル・デ・ナタはマカオを通って中国にも伝わり、中国語では「蛋挞」(卵のタルトという意味)と呼ばれています。マカオや香港のエッグタルトは、この記事では扱いません。

手に入りにくい材料の代用

  • 市販の冷凍パイシート:手順1〜4の代わりに使えます。合計360g(12個分)を用意し、半解凍の状態で表面に水を塗りながら、シートの端を1cmずつ重ねてつなぎます。打ち粉をして24×40cmにのばし、手順5から同じように作ります。日本の冷凍パイシートにはマーガリンを使うものもあるので、原材料にバターだけを使ったものを選ぶと、ポルトガルの味に近くなります。
  • 中力粉:ポルトガルの T55 という種類の小麦粉の代わりです。中力粉がなければ、薄力粉80gと強力粉80gを混ぜて使います。
  • コーンスターチ:なければ、薄力粉を5g増やして20gにします。
  • レモンの皮:皮の表面に防かび剤やワックスを使ったものは避け、国産のものを使います。白いわたは苦みが出るので、包丁でそぎ取ります。
  • エッグタルト型:ポルトガルのレシピには型の大きさが書かれていないため、この記事では上径7cm・深さ2.5cm前後の型を基準に、生地とクリームの量を合わせています。深さ2cmの浅い型なら16個分です。生地の棒を1.5cm幅に16個に切り、クリームは1個約28g(型の7〜8分目)まで注ぎます。焼き時間は10〜15分を目安にします。
  • マフィン型:上径7cm・深さ3cmの型なら10個分です。生地の棒を2.4cm幅に10個に切り、クリームは1個約45g(型の7分目)まで注ぎます。型が深いぶん、焼き時間は15〜20分を目安に、底の色で確かめます。

失敗したときは

  • 焦げ目がつかず、全体が白っぽい:オーブンの温度が足りていません。予熱を30分しっかり行い、天板ごと温めて上段で焼きます。オーブン温度計で、設定どおりの温度が出ているか確かめます。
  • 底の生地が生焼けで、べたつく:底の生地が厚すぎるか、型の下から熱が届いていません。底は側面より薄く押し広げ、予熱した天板の上に型を置きます。
  • クリームがあふれた:詰めすぎか、型が浅すぎます。焼くとクリームはふくらむので、型の7〜8分目までにします。深さ2cmの型なら、「手に入りにくい材料の代用」のとおり16個に分けます。
  • 焼く前のクリームがぼそぼそしている:卵黄を加えたときに、クリームが熱すぎました。シロップと合わせたあと、40〜50℃まで冷ましてから卵黄を入れます。

保存

  • 常温:焼いた日のうちに食べるのがいちばんです。生地はしだいに湿ってきます
  • 冷蔵:保存容器に入れて2日。食べる前に、200℃のオーブントースターで3〜5分温めると、生地のパリッとした食感が戻ります
  • 冷凍:手順5の巻いた生地の棒を、ラップで包んで1か月。冷蔵庫で解凍してから手順6に進みます

スペイン・ポルトガルのほかのレシピ

もっと知りたい人へ

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。