カヌレCannelé レシピ
canneléカヌレ

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。
カヌレは、ボルドーの小さな焼き菓子です。縦に溝の入った釣り鐘のような形で、外側は焦げる手前まで色づいたカラメルの殻、中はもっちりとしたカスタードのような生地です。ラム酒とバニラの香りがします。
材料は牛乳、砂糖、卵、小麦粉、バターと、どれも身近なものです。むずかしいのは、生地を丸1日以上寝かせることと、型の準備と焼き方です。ボルドーのパティシエ、シリル・サン・ニコラの配合を軸に、フランスのほかのレシピと比べながら、家庭のオーブンで焼ける手順にまとめました。
カヌレとは
フランス語では cannelé と書き、「溝のついた」という意味です。ボルドーの菓子店バイヤルドランは、溝のついた銅の型で焼くことからこの名がついたと説明しています。一方、フランス語版ウィキペディアは、名前が先にあって、それに合わせて溝のある型で焼くようになった可能性も挙げています。
n がひとつのつづり
ボルドーのカヌレ協会に加わる菓子職人は、n をひとつにした canelé と書きます。1985年に職人たちがこの協会(Confrérie du canelé de Bordeaux)を作ったとき、独自性を示すために n をひとつ取ったと、バイヤルドランやウィキペディアは説明しています。n がひとつのつづりは、協会の団体商標になっています。
一方、この記事のために読んだフランスのウェブ誌やラジオ局のサイト、レストランガイド、国の観光サイト、ボルドーの書店のサイトでは、n が2つのもとのつづりが多く使われています。この記事では、より広く使われているほうのつづりを表題に使います。
由来の説はいくつもある
よく語られるのは、ボルドーのアノンシアード修道院の修道女が考えたという話です。フランスのレストランガイドのゴー・ミヨと、ラジオ局ヨーロッパ1のサイトは、16世紀のこととしています。バイヤルドランは18世紀とする話を、本当かどうかはわからないとしながら紹介しています。ゴー・ミヨによると、当時の菓子は「カヌラ」などと呼ばれ、生地を細い茎に巻きつけて揚げたものだったとされています。フランス語版ウィキペディアは、修道院の菓子はラードで揚げたもので、いまのカヌレとは似ていないとしています。
ワインとの関わりもよく語られます。ボルドーのシャトー(ワインの醸造所)では、ワインを澄ませる「コラージュ」に泡立てた卵白を使います。余った卵黄が修道女たちに渡され、菓子に使われたと伝えられています。ウィキペディアは、ラム酒とバニラとさとうきびの砂糖が、ボルドーの港での植民地との交易を思わせる材料だとしています。
もうひとつは、卵黄を使ったパン「カノール」がもとになったという説です。ゴー・ミヨは、17世紀に「カノリエ」と呼ばれる職人が作っていたとしています。ウィキペディアは、カノールを19世紀の卵黄入りのパンとし、19世紀の職人の名簿にカノリエの名は見当たらないと注記しています。
確かな記録は新しく、スレート誌によると、いまの形のカヌレが文書に出てくるのは20世紀になってからです。ウィキペディアによると、1930年代のボルドーで流行し、第二次世界大戦のあとは、古くからのボルドーの裕福な家庭を除いて廃れました。1980年代の初めから少しずつ人気が戻り、ボルドー市長のジャック・シャバン=デルマスが市庁舎の歓迎会でたびたび出して、町の名物として広めたとされています。
この記事の配合
サン・ニコラの配合は、牛乳500gに対して砂糖250g、粉150g、全卵1個と卵黄3個、バター25g、ラム酒50gです。粉のうち50gはコーンスターチです。ヨーロッパ1の記事のレシピと、パリの菓子職人ジャック・ジュナンのレシピは、小麦粉だけを使っています。この記事では小麦粉だけにして、量はこの2つのレシピの割合(牛乳の22〜24%)に合わせて120gにしました。砂糖が牛乳のほぼ半分の重さなのは、3つのレシピに共通しています。
ジュナンのレシピは牛乳1kgで24個分です。この記事は牛乳500gで12個なので、同じ割合です。生地は1個あたり85g前後になります。
カヌレのレシピ:材料(カヌレ型(直径5.5cm・高さ5cm)12個)
生地づくり 24時間40分(生地を24時間以上寝かせるのを含む)焼き 約1時間難しさ むずかしい
生地
型の準備(銅型)
- 蜜蝋(食品用と表示されたもの(ろうそく用・工作用は使わない))(楽天)20g
- 食塩不使用バター20g
型の準備(シリコン型の場合)
- 食塩不使用バター(銅型の蜜蝋とバターの代わりに使う)15g
作り方
牛乳にバニラの香りを移す(焼く1〜2日前)
バニラビーンズのさやを縦に裂き、包丁の背で種をこそげ取る。鍋に牛乳375g、バニラの種とさや、バター25gを入れ、中火にかける。縁がふつふつとして沸騰しかけたら火を止める。冷たい牛乳125gを加えて温度を下げ、料理用温度計で50℃以下になるまでおく。さやは種をしごき出してから取り出す。
粉と砂糖に卵を合わせる
ボウルにグラニュー糖250gと薄力粉120gを入れ、泡立て器で混ぜる。中央にくぼみを作り、全卵50gと卵黄60gを入れて、くぼみの中だけで卵をほぐす。
牛乳を4回に分けて加える
手順1の牛乳を4回ほどに分けて加える。そのつど泡立て器を中央で小さく動かし、周りの粉を内側から順に取り込みながら混ぜる。泡立てず、空気を入れないように混ぜるのがこつ。なめらかになったら、ラム酒50mlを加えて混ぜる。
こして24〜48時間寝かせる
目の細かいざるでこして、だまを取り除く。表面にぴったりとラップをかけ、冷蔵庫で24時間以上、できれば48時間寝かせる。
型に蜜蝋を塗る(銅型)
型を100℃前後のオーブンで5分ほど温める。小鍋に蜜蝋20gとバター20gを入れ、ごく弱火か湯せんで溶かす。溶けた蜜蝋は熱く、皮膚につくとやけどになる。煙が出るほど熱さず、火のそばを離れない。温めた型も熱いので、オーブンミトンをつけて持つ。型に溶かした蜜蝋を流し入れてすぐに戻し、型を逆さにして網の上で余分を落とし、内側に薄い膜を残す。冷蔵庫で30分冷やして固める。シリコン型の場合は、溶かしたバター15gを刷毛で内側の溝まで塗り、冷蔵庫で冷やす。
生地を混ぜ直して型に流す
オーブンを250℃に予熱し、オーブン用温度計で庫内が250℃前後になったのを確かめる。生地を冷蔵庫から出し、底に沈んだ粉を戻すように、泡立てずに静かに混ぜる。冷えた型を天板に並べ、生地を縁から1〜2mm下まで流し入れる。シリコン型は天板にのせてから流す。
高温で焼いて表面を固める
230〜250℃で12〜15分焼く。上面のふちが色づき始めたら次の手順へ。途中で生地が型から1cm以上せり上がったら、天板ごと取り出して1〜2分おき、沈んでからオーブンに戻す。
温度を下げてじっくり焼く
180〜190℃に下げて40〜50分焼く。シリコン型は10〜15分長く焼く。上面も側面も濃い茶色(マホガニー色)になり、溝の奥まで色づいたら焼き上がり。1個を型から出してみて、側面が薄い色なら型に戻して5〜10分焼き足す。
熱いうちに型から出す
型と天板、中のカラメルはとても熱いので、厚手のオーブンミトンをつけて取り出す。顔を近づけずに、熱いうちに型を逆さにして網の上に打ちつけるようにして外す。網の上で1〜3時間冷まし、外側がカリッとしてから食べる。
焼いて冷ましてから数時間のうち、外側がまだカリッとしているうちに、手でつまんで食べます。コーヒーや紅茶とよく合います。卵白が3個分余るので、フィナンシェなどに使います。
料理科学:生地を24時間以上寝かせる理由
粉が水を吸って、生地がまとまる
カヌレの生地は、クレープの生地のように水っぽいものです。混ぜた直後は、小麦粉のデンプンの粒が水を吸いきっていません。スレート誌の記事では、寝かせるあいだにデンプンがふくらんで生地に少しとろみがつき、バニラとラム酒の香りも濃くなると説明しています。
寝かせているあいだに、粉は底に沈みます。焼く前に静かに混ぜ直すのはそのためです。スレート誌のレシピも、泡立てずに、円を描くように混ぜるよう書いています。泡が入ると、焼いたときにその空気がふくらみ、生地が型からせり上がる原因のひとつになると考えられます。
牛乳を50℃以下に冷ましてから卵に加える理由
卵のたんぱく質は、熱で固まります。熱い牛乳を一度に卵に加えると、卵のまわりだけが固まって、ぽろぽろのだまになります。スレート誌のレシピは、沸かした牛乳に冷たい牛乳を足して50℃以下に下げてから加えています。この記事も同じ方法です。
料理科学:外はカラメル、中はカスタード
外側:型に触れた生地の糖が焦げる
カヌレの生地は、牛乳の半分の重さの砂糖を含みます。牛乳と卵には、たんぱく質と乳糖も入っています。型に触れている外側では、水分が飛ぶと温度が100℃を超えて上がっていきます。そこで、アミノ酸と糖が反応して色と香りが生まれるメイラード反応と、さらに高い温度で砂糖そのものが焦げるカラメル化が進みます。砂糖の多い生地なので、外側に濃い色の固い殻ができ、冷めるとカリッとします。
ヨーロッパ1の記事は、最初に250〜270℃の高温で焼くのは、温度の差で外側をカリッとさせるためだとしています。家庭のオーブンは扉を開けると温度が下がりやすいので、予熱を十分にします。
中:水分があるうちは100℃を超えない
内側は水分が多いので、焼いているあいだも100℃を超えにくく、外側のようには色づきません。その温度で卵のたんぱく質が固まり、小麦粉のデンプンが水を吸ってのり状になり(糊化)、プリンのように柔らかく固まります。牛乳が粉の4倍ほどと多い配合なので、中身は乾いたケーキにならず、しっとりと重く仕上がります。
銅型・蜜蝋・シリコン型の違い
ヨーロッパ1の記事は、銅はほかの素材よりずっと熱をよく伝えるとして、銅型をすすめています。フランス語版ウィキペディアも、カヌレは熱をよく伝える小さな型で焼くものだとしています。銅型はオーブンの熱をすばやく生地に伝えるので、溝の奥まで色づきやすくなります。スレート誌も、内側を錫(すず)でめっきした銅型をとても大切なものとしています。錫は232℃前後で溶けるので、錫めっきの型は空のまま高温のオーブンに長く入れません。洗剤で洗うと錫がいたむとスレート誌は書いています。使ったあとは湯で流して乾かします。
シリコンは金属にくらべて熱を伝えにくい素材です。シリコン型では外側の温度が上がりにくく、殻が薄く、色も淡くなりがちです。スレート誌は、シリコン型でも十分な仕上がりになるとしながら、焼き時間を少し長くするよう書いています。
蜜蝋は、ミツバチの巣から取った蝋です。型の内側に薄い膜を作り、焼き上がりをはがれやすくします。ゴー・ミヨの記事は、ボルドー近郊のレ・ソース・ド・コーダリーのカヌレについて、蜜蝋がカヌレの表面に水を通しにくい膜を作り、カリッとした食感を生むと紹介しています。ジャック・ジュナンのレシピは、蜜蝋をバターと半分ずつ合わせています。この記事もその方法にしました。
手に入りにくい材料の代用
- 蜜蝋(食品用):スレート誌は、澄ましバター(バターの水分と乳たんぱくを除いた脂)で代用できるとしています。バター40gを弱火で溶かし、表面の泡をすくい、底に沈んだ白い乳たんぱくを残して、上の澄んだ脂だけを使います。普通のバターのままでは、乳たんぱくが焦げやすくなります。蜜蝋は、ろうそく用や工作用ではなく、必ず食品用と書かれたものを使います。
- 銅のカヌレ型:シリコン型でも焼けます。天板にのせて焼き、焼き時間を10〜15分のばします。金属の型はシリコン型より色づきがよくなります。
- バニラビーンズ:バニラエクストラクト5ml(小さじ1)で代用できます。手順1では入れず、手順3でラム酒と一緒に加えます。
- ラム酒:焼いてもアルコールはすべては飛びません。子どもやお酒に弱い人が食べるなら、ラム酒を抜きます。液体の量を保つために、手順1で加える冷たい牛乳を50g増やして175gにするのが、この記事の目安です(参考にしたフランスのレシピにはない置き換えです)。香りは控えめになります。
失敗したときは
- 生地が型からせり上がり、上がふくらんで白い:生地を型に入れすぎたか、混ぜるときに泡が入ったことが考えられます。スレート誌は、オーブンであふれないように、縁から1〜2mmあけて流すとしています。生地は泡立てずに混ぜ、せり上がったら一度取り出して沈ませます。
- 側面の色がまだらで、白い部分がある:型の蜜蝋が厚すぎたり、ムラになっていたりすると、そこだけ色づきにくくなることがあります。蜜蝋は流し入れてすぐに戻し、逆さにしてよく落とします。焼き時間が足りないときも色が薄くなります。
- 型から外れない:型の膜が足りないと、はりつきやすくなります。スレート誌とジュナンのレシピは、焼き上がったら熱いうちに型から出すよう書いています。スレート誌は、型の中で火が通り続けるのを防ぐためとしています。
- 外側がすぐにしんなりする:砂糖は空気中の水分を吸いやすいので、時間がたつと殻が柔らかくなります。冷めきる前に密閉容器に入れると、こもった湿気で早くしんなりしやすくなります。
保存
- 当日:スレート誌やヨーロッパ1は、焼いて早いうちに食べるのがいちばんとしています。焼いた日のうちに食べ、それまでは常温で、乾いた布をかけておきます
- 翌日:外側が柔らかくなります。200℃前後のオーブンで温め直し、網の上で冷ますと、外側の食感がいくらか戻ります。時間はオーブンによって変わるので、焦げないように様子を見ながら温めます
- 冷凍:1個ずつラップで包み、保存袋に入れて冷凍できます。外側の食感は落ち、長く置くほど風味も落ちるので、早めに食べきります。常温で解凍してから、翌日と同じようにオーブンで温め直します
- 生地:寝かせた生地は、スレート誌の寝かせる時間の上限と同じ、冷蔵庫で2日(48時間)までにします。焼く日まで型に流さずに保存します
もっと知りたい人へ
出典
- Slate.fr「La vraie recette des cannelés」(フランス語)
- Europe 1「Son histoire, sa recette, le choix du moule : tout savoir sur le cannelé」(フランス語)
- Do It In Paris「La merveilleuse recette du cannelé de Jacques Genin」(フランス語)
- Baillardran「L'origine du Canelé de Bordeaux」(フランス語)
- Gault&Millau「Le cannelé, son histoire et nos meilleures adresses」(フランス語)
- Wikipédia「Canelé」(フランス語)
- France.fr「À nous les meilleurs cannelés de Bordeaux !」(フランス語)
- Librairie Mollat「Le cannelé à l'honneur !」(フランス語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。